今回は、生オガ発酵マットについて書きたいと思います。
クワガタのマット飼育において革命とも言える生オガ発酵マットは幾つかのメーカーさんから販売されており、メーカーによって品質は様々です。
全国に生オガ発酵マットの成果を広げたのは、ビークワかと思います。
中でも、ブリーダーズファームさんの生オガ発酵マット『技』はフタマタ、ミヤマでレコードを総嘗めにしていた時期もあります。
菌糸主流のクワガタ飼育に生オガ発酵マットが登場してから二次的だった発酵マット飼育において、マット羽化個体のサイズがずば抜けて伸びた事により、二次的な飼育方法ではなく、1つの飼育方法だと証明することができたと思います。
今回は、注意点なども含め軽くですが記事にしたいと思います。
※生オガとは?
『生オガ』とは、伐採された広葉樹をそのままオガにしたものです。
椎茸栽培に使用済みのホダ木を粉砕したオガは『ホダオガ』です。
ホダオガの未発酵オガは生オガとは言いません。
※生オガ発酵マットの利点
生オガ発酵マットは、キノコ菌糸によって腐朽されたホダオガ使用のマットと違い劣化スピードが遅く、食い上がらなければ8か月ほど放置しても全く問題ないです。ノコギリ、シカなどの♀️ならば1本羽化させられます。
樹木本来の栄養を閉じ込めた発酵マットなので、良質の生オガ発酵マット+最適な飼育環境+飼育技術があれば野外ギネスサイズに匹敵するサイズを羽化させることができます。
メアレーミヤマ72㎜
生オガ発酵マット使用
ボイレアウイシカ66㎜
生オガ発酵マット使用
※生オガ発酵マット使用の注意点
市販されている生オガ発酵マットを何社か使用してみましたが、残念ながら幼虫が全く育たない商品がありました。
私自身、初めて生オガ発酵マットを購入したモノは、到着時に赤褐色の色をしていて、触るとザラメ状で粒子が硬く角があり、クワガタの幼虫を試しに入れてみましたが、オガが発酵腐朽しておらず消化できないのでしょう?5ヵ月経過しても2齢のままでした。その時投入した幼虫は殆ど死んでしまい最悪の結果となりました。
正直、初めて購入した生オガ発酵マットがこのような結果で、生オガ発酵マットに対して良い印象をもちませんでした。
このようにザラメ状の発酵の浅い生オガ発酵マットも売っており、当然そのような生オガ発酵マットは幼虫が消化できずに死んでしまったりしてしまいます。
例え発酵の浅い生オガ発酵マットを食えたとしても発酵しきれてない=発酵期間が短いので、幼虫が栄養として取り入れらなかったり、バクテリアに分解されてない添加物をダイレクトに幼虫が接種してしまうので、羽化したときに腹が収まらず、死んでしまうことも普通にあります。
また、このような発酵の浅いザラメ粒子の生オガ発酵マットはボトルに詰めた後、オガがつぶれない為、通気が良く水分の蒸発が非常に早いので、冬場の暖房によるエアコン管理にてマットがカサカサになってしまいます。
私個人の考えとしては、ブロック状のザラメ生オガ粒子でのマット作成には、かなりの時間が掛かるのでオススメできません。このようなブロック状粒子は菌糸等で使われている粒子で、カッター歯で粉砕されると四角い粒の粒子になるようですが、菌糸に分解されにくくするためや、土壌に混ぜて通気や水はけを良くするための粒子らしく、あえてそのような形状にしてるようなので、発酵マット作成にブロック状粒子は選ばない方が良いと思います。
添加物を加えてカンハクした生オガ
私が使用してる生オガは微粒子で、皆さんが良く産卵に使用されるような粒子に仕上げてもらってます。繊維質の微粒子であればザラメ感もなく、均一にマットが発酵してくれます。
ザラメ状の生オガ発酵マットを購入してしまった場合は衣装ケースなどに移して再発酵をかけ微粒子の発酵マットと混ぜれば使用できるので、手間は掛かりますが、決して使えないモノではないので、捨てずにご自身で発酵~ブレンドさせて使用してください。
※生オガ発酵マット作成
以前、記事にもしましたが発酵マット作成において生オガ発酵マットは上級者向きで、ホダオガ発酵マットの自作で慣れてから生オガ発酵マット作成に挑戦された方が私は良いと思います。
作成した生オガ発酵マット仕込みから4カ月経過したもの
作成方法は全くおなじですが、発酵期間が長くどの状態になったら完成なのか?という見極めが必要になります。
ネットや本では自作発酵マットの発酵期間は1ヶ月と良く掲載されておりますが、ホダオガ発酵マット作成時の話で、生オガ発酵マットはその1ヵ月で完成させることはできません。
実際、両方作成された方はわかると思いますが、生オガを1ヵ月発酵させただけだとブロック状粒子じゃなくてもオガの色はまだまだ生オガのままで、初期発酵しかしておりません。発熱もしておりますし、いろんな意味で良いことないかと思います。
某雑誌の飼育記事で生オガを3週間発酵させて完成と掲載されておりましたが、私からしたらあり得ない話で、その三週間のみ発酵期間で作成された生オガ発酵マットでは食性の強いオオクワガタでさえも育ちませんので、飼育記事を真似をされてしまった方は非常にかわいそうかと思います。
雑誌やネットには全てが正しい情報とは限りません。
その情報が本当なのか?ウソの情報なのか?は検証してみてみないとわかりません。
※生オガとホダオガの混合発酵マット
何社かで販売されております。生オガとホダオガミックスのタイプのマットですが、ホダオガに発酵期間を合わせているのであれば、混ざってる生オガは浅い発酵しかしておらず、使用した段階では栄養として幼虫は接種できないでしょう。
このようなマットのコンセプトは『持ちが良いマット』であって、生オガを持ちを良くするという観点から考えられて混ぜているのかと思います。使用後3ヵ月後ぐらいにホダオガ発酵の粒子が劣化した頃に、生オガ発酵の粒子がボトル内の栄養を保たせる的な役割もあるのではないかと私は思っております。
このようなマットは機械で1ヵ月ほどしか発酵をかけられてないので、新鮮なロットだと発酵しきれてない生オガが再発酵する場合が高く、購入した際は、袋から出した後、衣装ケースで少し寝かせた方が無難かと思います。
※生オガ発酵マットの飼育
菌糸もマットも同じですが、どんなに良品の用品を使用していても管理する側に知識がなければ大きく羽化させることはできません。
《餌+環境+血統+技術、知識》
これが組み合って初めて特大の個体を羽化させることができます。
生オガ発酵マットを使用したからといって大きく育てられる人と、育てられない人に別れます。
特大出してビークワレコードを狙いたいのであれば、沢山飼育してデータをとって研究されてみてください。
ビークワレコードを出すヒントとしては…
《他人がやらない領域までやる》
事かと思います。
※生オガ発酵マットの後添加
良く発酵マットに添加物を入れてる方を目にしますが、基本的に発酵マットの添加物は起爆剤で少しは栄養としてマット内に残るのかもしれませんが、そもそも生オガ発酵マットの飼育は木の本来の栄養化を幼虫が消化しやすい発酵食品にして育てるようなイメージですから、添加剤を食わせて大きくするオオクワガタの菌糸飼育とは全く考えが違うかと思います。
添加物の種類や量によりますが、発酵マットの添加率がメーカーでことなる中で、ロットごとにも微妙に発酵濃度や添加率は変わるので、再発酵や添加率が多すぎて、幼虫が死亡したり、羽化個体が太ってカッコ悪くなってしまったりもします。
しかしながら、後添加について否定しているのではなく、昆虫飼育に正解というのは存在しておらず、思ったことは失敗を恐れずに一度チャレンジしてみた方が良いかと思います。
何かしら人と違う添加剤や作成方法で他のブリーダーさんが羽化させられないような個体を羽化させることができるかもしれません。
ここで伝えたいのは「そのようなリスクが有りますよ」という事であって、どんどんチャレンジしていってほしいかと私は思います。
※生オガ発酵マットで飼育できる種類
主に、ホダオガ発酵マットで飼育できる種は殆ど飼育できるかと思います。
ただ、ヒメミヤマ、ツヤクワガタ、マルバネ、南米系に使用する際は、発酵マットの熟度を普通のクワガタより高めにしてあげないと食べれないかと思いますので、ホダオガ完熟発酵マットをお勧めします。
根食い系ドルクス、シカ、フタマタ、ノコギリ、中型~大型ミヤマ、ネブト、キクロ、は生オガ発酵マットで順調に育ちます。
根食い系ドルクスと書きましたが、主にヒラタ系(ライヒ、ヒペリオン、大型ヒラタ)は菌糸と変わらない結果をだせます。
関東のヒラタを飼育されたことがある方は菌糸であまり大きくできなかったご経験があるかと思いますが、生オガ発酵マットで飼育すると70㎜に迫る個体の羽化も可能です。西日本のヒラタより食性が弱いのかと思います。
ドンキ、マクレイなどはあまり生オガ発酵マット飼育がマッチしていないように思いますが、アローリエンやネパレンシスは生オガ発酵マットで75オーバーの羽化も可能です。
ネブトに関しては生オガ発酵マットの超熟タイプにて飼育可能ですが、少しホダオガ完熟発酵マットを混ぜた方が安定します。
※オオクワガタ3大大型血統の生オガ発酵マット飼育
ホダオガ発酵マットでも78㎜ほどのオオクワガタが羽化しており、現代の90オーバーの大型血統を良質な生オガ発酵マットで飼育すると90㎜を出せるのか?
この検証は誰もやったことはないと思います。
生オガ発酵マットでオオクワガタの大型血統で90㎜を目指すとなると、オオクワガタの優良血統とオオクワガタの飼育のブリーダーさんと発酵マット飼育のブリーダーさんが、タッグを組まなければ、実現しない話しになってしまうかと思います。
・菌糸メインでオオクワガタを飼育されているブリーダーさんは、発酵マットの知識が浅く、発酵マットの見極めや交換のタイミングがわからない方が殆どで、幼虫が食べた部分の判断などが慣れないと難しい部分があるかと思います。
・発酵マットメインの方はオオクワガタ以外を飼育されているブリーダーさんが殆どかと思います。オオクワガタで90㎜を狙う知識や技術と優良な種親を手に入れることが難しいかと思います。
いつかこの生オガ発酵マットによる大型血統のオオクワガタ飼育に挑んでくれるブリーダーさんが出てきてくれることを祈っております。
最後に、何事にも挑戦し自分で感覚を掴んで飼育していけば、必ず結果は出ると思います。
重要なのは・・・
《結果より過程》
なのです。
飼育する餌、環境、交換タイミングの過程を掴んで行かなければ結果はでませんし、過程を掴めば結果は必然的に付いてきます。
虫の飼育で結果を出すことに年齢は関係有りません。
クワガタ飼育に全力を注いだ者のみが特大個体を拝めるのだと思います。
結果を出したい種で、一つ一つの飼育過程を追求していき今後も素晴らしいブリーダーさんが出てきてくれることを祈っております。
究極を追い続けていけるブリーダーさんをWild-villageは応援いたします。
以上!!